不整脈

 心臓の中には4つの部屋があります。心臓の上の部屋(心房)、下の部屋(心室)がそれぞれ右・左とあります。

 体を巡ってきた血液(酸素が少ない血液) 右房 → 右室 → 肺動脈 → 肺で酸素を受けとる 肺から戻ってきた血液(酸素たっぷりの血液  左房 → 左室 → 大動脈 → 体中に送られていく。 心房は隣の部屋に血液を送り出すだけなので壁が薄い 心室は遠くまで血液を送り出すので壁が厚い → この壁の厚さ(筋肉の量)の差が心電図の変化として出てきます。

心房が収縮 (この間に心室が広がる) → 心室が収縮 (この間に心房が広がる) 小さい波 → 大きい波 この様な順番で心臓が規則正しく動いているのが正常です。

 本来心臓の筋肉は自ら興奮し刺激を生み出せる能力があります(自動能と言います)。簡単に言ってしまえば、どの場所でも勝手に収縮してしまう能力があるということです。
しかし実際には心房が収縮してから心室が収縮する順番が保たれています。それは命令権限に上下関係があるからです。 右房にある洞結節の一番命令権限が強く、洞結節(王様)がしっかりしていればほかのところが勝手に収縮することなく心房→心室の順番で心臓が収縮していきます。(これを洞調律といいます)
不整脈はこの流れがうまくいかなくて起こってきます。
● 洞結節がしっかり働かない → 洞不全症候群(脈が遅くなりすぎたりする)など
● 他の心筋が勝手に動いてしまう → 期外収縮や心室細動など
● 心臓の中に余計な通り道があり電気信号が勝手にぐるぐる回る → 発作性上室性頻拍など。
● 心房から心室へ電気の信号がうまく伝わらない → 房室ブロック。

期外収縮に関して

 心臓には心房(上の部屋)と心室がありますが、どちらも洞結節の命令が来る前に勝手に収縮してしまうことがあります。一定に脈を打っていて、一瞬脈が飛ぶというときは期外収縮のことが多いです。

● 心房で勝手に収縮が始まって電気の信号が心臓に広がる → 上室性期外収縮
● 心室で勝手に収縮が始まって電気の信号が心臓に広がる → 心室性期外収縮

 24時間心電図を取り続けると誰でも大体は期外収縮が起こっています(24時間心電図で1回も期外収縮が出ていない人はまず見ません)。なので、期外収縮が出ていることが必ずしも大きな異常があるというわけではありません。

 
 上室性期外収縮・心室性期外収縮ともに症状がある場合やたくさん出ている場合には検査をお勧めしています。(具体的には甲状腺というホルモンの検査を含む血液検査や心臓の超音波検査・心エコー、必要に応じて肺の病気や24時間心電図・運動負荷試験など。)
 ただ特に上室性期外収縮に関しては、ストレス(肉体的にも精神的にも)やお酒・たばこなどの影響が大きく関与していることが多いです。負担がかかっているよという体からのサインだと思っていただくのが良いです。

心房細動に関して

 本来であれば洞結節(王様)が命令を出して順序よく心房→心室の順番で心臓を収縮させますが、心房のなかであちこち勝手に心臓を収縮させろという命令を出してしまう病気があります。これを心房細動といいます。心房のなかで1分間に400-700回と物凄く速く電気信号を発するのですがその速さではちゃんと心房は収縮することはできず、細かく震えるだけになります(細動)。

 1分間に400-700回の信号が心室に全部つながるとポンプ機能が破綻するので心房と心室の間にある関所(房室結節)で適当に電気信号を間引いて心室に電気信号を流します。そのために脈がバラバラになります(絶対性不整脈とも呼ばれます)。

 発症後間もないうちは脈が速くなることが多いです(心拍数が150以上で続くことも)。そのために脈が速くなりすぎない様にしたり、薬で正常な脈に戻すようトライしたりすることもあります。脈が速すぎて心臓のポンプ機能が破綻してしまう場合には電気ショックをかける場合もあります。心房細動がずっと続く(慢性化)と、症例によっては脈が遅くなりすぎて困ってしまうこともあります。

 心房が細かく震えるだけだと心房の中で血液の流れが滞ってしまい、結果として血液が固まって血栓というものを作ってしまうことがあります。それが何かの拍子に心房からはがれ血液に乗って送り出されると、送り出された先の血管が詰まってしまいます。血栓が頭に行く血管に詰まってしまうと脳梗塞を発症してしまいます。心房細動が原因の脳梗塞は大きい脳梗塞を起こすことがわかっており、この脳梗塞が原因で亡くなってしまうこともあります(官房長官時に平成の元号を発表した小渕元首相も心房細動が原因の脳梗塞で死亡したと言われています)。

 血栓を予防するためには血を固まりづらくする薬を使用することになります。薬の副作用として出血(血が止まりにくくなる)があるため、塞栓症(脳梗塞など)を起こす危険性・薬による予防効果・薬による副作用の危険性等を天秤にかけて薬を使用するかどうかを決めていきます。どういう患者さんに薬を投与した方が良いかを判断する基準が複数ありますが、基本的には
● 心不全がある
● 高血圧がある
● 75歳以上
● 糖尿病がある
● 脳梗塞の既往がある
のいずれか1つでも当てはまると脳梗塞予防を検討することになります。

 心房細動自体への治療方針としては
● 脈を正常に戻すようにする(リズムコントロール)
● 脈が速くなりすぎないようにする(レートコントロール)
の2つがあります。リズムコントールに関しては薬剤による治療とカテーテルによる治療があります。
症状の程度や罹病期間など総合的に判断して治療を選択していきますが、どちらの治療を選んでも脳梗塞予防をしっかりしておけば長生きの程度には変わりがないとされています。